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評価:
真保 裕一
講談社
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『ローカル線で行こう!』系のお仕事小説と思い、さらにデパートという舞台のなかでのミステリー系小説とも思いながら読み進めましたが、まんまと期待を裏切られました。ただし、面白くないんじゃないんですね。
ユーモアパニック小説というかコメディスリラー?小説というか、なんとも分類のできない小説ですね、これ。強いて言えばドタバタミステリーか。
売り上げもままならないデパート。土曜日の閉店間際、良からぬことを企む店員、自殺を企てる中年、行き場のない高校生カップル、道を外した元刑事がデパートに居残り。夜のデパートを舞台に、社長や警備員までをも巻き込み、ハチャメチャなストーリーが展開する。
これ、伊坂さんの小説を読んでいる感覚。他の作家さんと比較してはいけないんでしょうけど、本当にそう思いました。
だからといって、面白くないということはありません。上手いんです。別々の話が終わりにかけてまとまっていくその快感と言ったら、この上ない。
閉店した後のデパートの裏側を垣間見たような気がします。警備するのも大変でしょうねー。
いずれの登場人物もある事件に関わりがあるというのも話としては面白いですね。
ラストも良いです。この伝統あるデパートのテーゼが盛り込まれており、庶民に親しんでもらうデパートにしなくてはいけないというもの。
ただし、百貨店を含むデパートの現在を考えたら、相当厳しいですよね。高級品志向というイメージがあったのですが、郊外に立ち並ぶ大型ショッピングモールが、それを脅かしているんですね。百貨店が生き延びるにはどうすればいいのか。裏事情も絡みながらも、考えさせられました。
子どもの頃、デパートの屋上に行って遊んだ。それももはや遠い昔。
がんばれ、デパート。
デパートへ行こう!