<悲しすぎる別れと怖すぎる幕切れ。山田太一が描くホラー小説>
大石静の「
四つの嘘」のところでも載せていますが、優れた脚本家は小説の名手であるというのがわたしの持論。
その山田太一さんの名作「異人たちとの夏」が奥田英朗さんの「
野球の国」に出ていました。どうやら奥田さん、山田太一の小説が好きらしい。
妻と離婚し、孤独になったシナリオライターの前に現れるのは、同じマンションに住む女ケイと浅草に住む12歳のときに亡くした両親に酷似した家族。孤独ゆえに安らぎを求め、ケイとあたたか過ぎる家族との交流と悲しいまでの別れを描く。
本日、読み上げました。
これは、浅田次郎ばりの泣かせる小説ではないですか。キャッチボールをするシーン。すき焼きを食べに行くところなど、とても涙なしでは読めない。
しかし、それだけではありませんでした。背筋も凍るほどの怖い仕掛けを用意していたのです。
これは怖かったです。まさかこういう展開になるとは。
両親に会いに行くたび、疲労していく主人公。自分では気づかないほどやつれていくのです。
これだけでも怖いのですが、やつれていく真の原因に気づいたとき、恐怖が押し寄せます。
しかし、この展開読めるんです。途中で気づいてしまうんですが…。山田太一さんはそこから読者を突き放すんですよね。あまりに違う展開にびっくりしてしまいました。孤独の中から、大事な人と出会って、分かれなければならない状態になった時の悲しみ。痛いほど伝わってきます。
読ませます。泣きます。怖いです。しかし展開がどうも納得できません。ラストがないほうがわたしは好きなので、3点評価になりました。
山田 太一著新潮社 (1991.11)ISBN : 4101018162価格 : ¥420通常2-3日以内に発送します。