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評価:
奥田 英朗
集英社
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家庭内の「明るい隙間」を描く傑作短編集。ネットオークションにはまる専業主婦、会社が倒産し主夫となった夫、ロハスに凝る妻に辟易する小説家の夫……など。あたたかい視点で描く新しい家族の肖像。第20回柴田錬三郎賞受賞作。【集英社文庫HPより】
久しぶりの奥田さんの作品ですが、笑いましたね。やはり奥田さんの作品はいいなー。今、この手のユーモア小説は、荻原さんか奥田さんのものですよね。奥田さんの方がアクは強い気がする。そこがまたいい。
いやー、面白かった。あっという間の一気読み。痛快な読書でした。奥田さんはやはり、上手いですね。この手の小説を書かせたら、ピカイチ。それは伊良部先生シリーズで証明されていますけど。
でもこの作家、ユーモア小説だけではないところがすごいのです。『サウスバウンド』『最悪』『ガール』など実に幅広い作風を持っておられます。そういうところは、これまた私の好きな荻原浩さんに良く似ておられますね。本当に面白いので、早く新刊出ないかと期待させてくれる作家さんです。前置きはさておき、内容ですね。
『サニーデイ』はネットオークションにはまる主婦の話。オークションで次々と不要なものは売りさばき、どんどんはまっていきます。やがて、夫の大事なものまでも、最後はホロリです。
『ここが青山』リストラに遭い、主夫業に専念することになった夫ですが、これがどうやら、合っていたよう。妻はこのときとばかり、働きにでます。こんな夫婦もありで、いいよなーと思える作品です。主婦業も楽ではないんだけど、家もいいでしょうと思えてきます。
『家においでよ』は妻が出て行ったあと、自分の部屋ができたと、次々と自分の好みに部屋を変えていく男の話。これまた、最後がいいんです。
などなど、ユーモアのセンスが実に良く、笑えるんです。ただ笑えるんじゃなく、最後はほのぼのときます。家もいいじゃないと働いているわたしにとっては思えてくるんですね。
そして、ネットオークションにはまる過程などから、あっ、ここにもわたしがいる。次々に自分の城を築いていく男の話などは本当にうらやましい生活だよなー。だからといって、今の生活に不満があるわけじゃなく(笑)。
誰もがふと思う日常の一端を、奥田さんは実に上手く話を作られますね。感心しました。
そして、皮肉。ロハスの生活を描く『妻と玄米御飯』には大笑いでした。こういう生活している人もいるんでしょうね。実に窮屈だよな。良かった興味がなくて。『グレープフルーツ・モンスター』は少しやりすぎかな。まあ、これはご愛嬌。
どの作品も実に面白い。
家っていいなーと本当に思える作品です。さあ、あなたはどのタイプ?奥田流在宅小説にはまってください。オススメします。