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評価:
朝倉 かすみ
集英社
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「わたし」が「わたし」の邪魔をする――
子犬救出劇を自作自演する美しい少女、カード破産してもロハス生活を続けるカップル、ダニと鼠のいる部屋に住み深夜のコインランドリーに現れる女など、身の丈に翻弄される人々を描いた短編集。【集英社HPより】
何とも言えない作品集ですね。
あらすじにもあるように、テーマは「身の丈」ということなんでしょうけど、イタイ話ばかりだけに素直に笑えないんですね。でもでも、笑ってましたけど。
精神的、肉体的、経済的にもコンプレックスをもっている人のお話だらけです。
例えば「内海さんの体験」。同じ会社の女性たちを、B(ブス)、D(デブ)と区分けして見ている。じぶんはF(フツー)と見られたいと思っているんですね。W(腋しゅう症)というコンプレックスを抱えつつ、ある日同級生と出会う。結構、デートえおするのだが、自分の身の丈を考え、最後に出した決断が悲しい。
カード破産をした夫婦が、自分たちの生活なりにロハス気分を味わおうとするが、ラストの何と皮肉なこと…「素晴らしいわたしたち」
ダニと鼠のいる部屋に住む女。その女がある日、コインランドリーで見たものは…「ちがいますか」
と、どこかで素敵な生活や恋や、素晴らしい美貌を夢見つつ、最後は何となく自分の身の丈に落ちつけてしまうという話が7作です。
異常な話だよなと思うのは途中までで、どこかにそんな自分も潜んでいるから笑えないんですね。
誰にもコンプレックスや、悲しい過去を抱えつつ、生きていかなければなりません。そんな希望を持ちつつも身の丈にあった希望があるじゃないといっているのですね。王子様には出会えないんですね。結局、自分のことと置き換えて考えてしまいますね。
このブラックと切なさ。世相を切り取る鋭さ。やはり、この作家さんは凄いと思います。
何となく奥田英朗さんや荻原浩さん通じる、可笑しさがありますね。
そういう意味では、小説家らしい、小説家と言えるのではないでしょうか。
笑えるけど、笑えない。イタい小説だけど現実を感じてしまう作品集なのでした。
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自作自演の子犬救出劇を同級生に目撃され、転落していく美少女。カード破産しながらもロハス生活を実践しつづけるカップル。短命の家系に生まれた夫の「ぽっくり」を恐れる中年初婚夫婦etc…「わたし」という容れ物の限界に翻弄される人たちの、哀
嫌な気分になってしまいました。
朝倉さんは繊細な文章をかかれますよね。他の作品に期待します。