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<儚いけれど、揺るぎない家族という絆>
時間をこえて、遭遇する不思議な出来事。過去の思いが現在の自分に現われたとき、人はどんな思いになるのか。現実の中で失いたくないものと、「家族」という絆が主題の8つの短編集。
加納作品は久しぶりでした。「ななつのこ」や「魔法飛行」の初期の加納作品しか読んでいなかったので、どうかなと思って読んだのですが、良かったです。
こんなに切なくて、それでいて哀しみだけではなく、現在を前向きに生きる話、好きなんですね。読後も清々しいんですよ。
最初にある表題作の「モノレールねこ」は、家に現われたデブ猫。次第になつくようになるが、ある日、首輪があることを発見する。それから、首輪に手紙をつけてみる事に。そこから、見知らぬもう一人の飼い主との交流が始まるのだが。
「パズルの中の犬」はジグソーパズル好きの主婦が、ある日真っ白いパズルを買う事に。そのパズルから浮かび上がるものとは、幼いときに遭遇したあの光景。そこから、過去への回想が始まる。
「マイ・フーリッシュ・アンクル」は不幸な事故で家族を失った主人公。しかし、家族の中で残ったのは、毎日ごろごろしていた叔父さんのみ。二人の共同生活が始まるのだが、なぜ叔父さんがこの家に住み着くことになったのか。
特にお気に入りは「マイ・フーリッシュ・アンクル」です。不幸な事故で家族を失いますが、健気に頑張る主人公。グータラ叔父さんとの過去の思いを知ったとき、主人公共々、涙が出てくるんです。
まさにバカな叔父さん。しかし、そんな生き方を決して否定できないと誰もが思えてしまうんです。不器用なんだけど、そんな叔父さんが大好きなんです。ラストも爽快です。
すべての作品が粒揃い。日常の中で起こる不思議な出来事は、とっても切なく愛おしいものばかり。珠玉の短編集です。いつか読み返したい作品です。いいなあ、加納作品。
ぜひぜひ。
どの作品も切なくなる中に、温かさが溢れている気持ちの良い作品でしたね。
表題作「モノレールねこ」と「バルタン最期の日」がお気に入りです(動物モノに弱いんですよね(^_^;)