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『かたみ歌』との関連性はないけど、同じ括りと言ってよいでしょう。『かたみ歌』は商店街にすむ人々の不思議なミステリーでした。今度の舞台は昭和40年代、高度成長期の最後の方ですか。人口は増え続け、鉄筋の団地が続々、建設された時代ですよね。。

できごとは三億円事件、大阪万博、札幌リンピック、巨人V9、浅間山荘事件など。30年代からの高揚した時期から続いての高揚期。でも陰りも見え始めているんですね。そうそうドリフターズやコント55号も人気を博したのもこの頃です。
ていうか、私の幼少期じゃん(笑)

さて、お話は東京近郊の新興団地虹ヶ本団地の人々の話。例によって、例のごとく不思議なミステリーが語られていきます。絶妙にタイトルの通りの歌を背景にして、出来事なども加えられており、私の年代は面白いと思います。懐かしいという感じですね。

三話「バタークリームと三億円」あたりから俄然面白くなります。「ゆうらり飛行機」はいい話ですね。。

この団地にすむ住人たちの関連性がポイント。特に塾の講師であり、仕立て屋の川辺さんが物語を担っています。
ただねー、連作という形にしない方が良かったのではないかとも思うんです。そうすることで、無理も出てきているんじゃないかとも思えましたし。

でもでも、いい話、泣ける話ばかり。一重に懐かしいし、こういう時代に対してのあこがれもあったりしてね。楽しめました。次は50年代でしょうか?

朱川さんの「なごり歌」の感想の前にこれを載せておかなくちゃ。
当時の朱川さんの作品を読んだ時の感想です。

再掲【2006.7.5】
西の「花まんま」、東の「かたみ歌」といった対になる代表作といってもいいと思います。
昭和40年代の東京の下町「アカシア商店街」。古書店の「幸子書房」や異界へと続いてるといわれるお寺の「覚智寺」。レコード店の「流星堂」などこの商店街に暮らす人々の不思議な奇妙な連作短編集。
収録作品は「紫陽花のころ」「夏の落し文」「栞の恋」「おんなごころ」「ひかり猫」「朱鷺色の兆し」「枯葉の天使」

この中でわたしが好きなのは「夏の落し文」と「栞の恋」。そして最後にあっといわせる「枯葉の天使」「夏の落し文」では、ある日、電柱に貼られた不思議な文句「カラスヤノアサイケイスケアキミレス」の張り紙。これだけではまったく意味不明な言葉。しかし、これはこう読む「ガラス屋の浅井啓介、秋見れず」

すなわちこの短編の主人公のことなのだ。これだけで、もうゾクゾクしてしまいました。
不思議で怖い話ばかり。しかし、決して怖いだけではありません。「花まんま」と同様に妙な懐かしさとそれでいて温かさ、優しさがこの作品にはあります。代表的なのは「おんなごころ」の残酷さを見事に「枯葉の天使」でほのぼのと優しい気分にさせています。
そしてこの作品の中で使われているのが昭和40年代の歌の数々。「アカシヤの雨がやむとき」「黒猫のタンゴ」「ブルーシャトー」「モナリザの微笑み」

あなたは何曲知っていますか。タイトルの「かたみ歌」はこうした歌を背景に物語が綴られていることによりつけられています。歌は世につれということを実感するとともに、実に懐かしい味なのです。
この商店街で不思議な物語の中心に絡んでいる「幸子書房」。この書店もちゃんと話を作っている。噂では異界との境界であるという「覚智寺」より、本当の境界は「幸子書房」にあるということを気付くはずです。

1話ごとの完成度は「花まんま」が良いと思います。しかし連作短編集ということも考えればトータルとしては「かたみ歌」が良い。
「花まんま」「かたみ歌」まさに作者の代表作であるのは間違いないようです。
朱川ワールドをじっくり堪能して下さい。 

評価:
朱川 湊人
実業之日本社

 <願いは必ず叶う。ただし、いっぺんだけなあ>

久々にノスタルジックホラーの名手、朱川さんの新作を(ちょっと遅れましたが)読みました。まさにノスタルジックホラーという感じの作品で、やはり、いいなあ。ホラー嫌いの人にもこんなホラーなら読めるのでは。懐かしい香りのする8つの話です。

『花まんま』の直木賞作家が描く命と友情と小さな奇跡の物語。田舎で出合った8つの不思議ストーリー。【BOOKデータベースより】

何といっても表題作「いっぺんさん」がいいですね。友人のしーちゃんといっぺんしか願いを叶えない神様を探しに山に向う。やっとたどり着いた先で願い事をする二人だが。そこから急展開します。二人は、どんな願い事をするのかというところが、この話のキモなんですが、主人公の少年の願い事が、予期せぬことで叶うことになります。そこが、感動するんですねー。短編なので、それもホラーとミステリの融合している作品なので、このぐらいしか書けないのが残念。

鳥がおみくじをする手伝いをする少年。ヤマガラのチュンスケとの交流を描く「小さなふしぎ」もいい。これ昔、どこかで見た鳥の芸だよなー。そして、時代の背景がとっても朱川さんらしいんです。『わくらば日記』にも同じ様な感想を持ったんですが、戦争が終わってからの時代をしっかり、背景にしています。そういう背景だからこそ、チュンスケと少年の交流が心に沁みるんですね。

ホラーだから当然怖いです。『コドモノクニ』の四つの話の怖さ。これ恐怖の四季ですよね。決して、子供達に聞かせられない。昔話をモチーフに朱川流のホラーです。
その他、不思議な村にたどり着き、快楽にふける青年の話「逆井水」。とっても不気味な話「蛇霊憑き」。一転、悲しい物語「八十八姫」など、まさに朱川ワールド全開です。

やっぱり、朱川ホラーは心に沁みる。「いっぺんさん」があまりに良くて、他の作品が少しかすむ気もしますが、様々に楽しめました。
あっ、裏表紙にもちゃんと仕掛けが。これがまた感動するんです。

ぜひぜひ、このノスタルジックホラーの秀作を読まれることをオススメします。
また『花まんま』を読みたくなりました。

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