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評価:
朝倉 かすみ
光文社
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2009年吉川英治文学新人賞受賞作。
この作品、朝倉さんの出世作で話題作でしたね。なぜか、読まないで今まで来てしまいました。朝倉さんの作品は、一癖も二癖もある人たちの物語りかなと思っていたのですが、違っていました。
これは、面白い。そして、こんなに感動があるなんて。思い込みとは恐ろしいものだ。
四十歳になる男女五人はススキノのバー、チャオで、間に合わなかった「田村」を待っている。
待ちながらそれぞれの、過去にあった出来事と人たち。かけがえのない言葉と触れ合い。
「それにつけても、田村はまだか」
第1話「田村はまだか」で、田村の人物像が浮かび上がるんですが、強烈で。この田村という人物が5人の中に影響があるということが分かるんですね。
「どうせ死ぬから、今、生きてるんじゃないのか」
この言葉でやられました。
わたし短編作品集とばかり思っていたのですが、これ形は連作短編でした。それも驚き。
第2話「パンダ、全速力」の
「全速力で走れよ、きみ」にもやられましたが、
第3話「グンナイ・ベイビー」に参りました。
「……泣く子はいねが?」「わるさをする大人はいねが?」で押し寄せる感動と涙。でもこれだけではなかったです。
終わりに近づくにつれ、なぜ田村はこないのか分かるんですね。
この展開に思わず唸りました。うまいよ、朝倉さん。
ラストは、田村らしくてとんでもない感動なんですね。
やられました。朝倉かすみという作家さんを世に出した作品とは言え、これは読み継がれる傑作ではないですか。
いい作品です。今後も期待してます。