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評価:
瀬尾 まいこ
文藝春秋
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占い師のルイーズ吉田。インチキ、いかさまと自分でもわかっていながら、相談に来る人たちの、背中をそっと押す、そんな占い師。相談に来る人たちとルイーズを取り巻く人たちが織り成す、ハートウォーミングな短編集。
瀬尾さん13ヶ月ぶり、待望の新作です。
期待を裏切らない、とても安心感に浸れる作品です。
主人公、ルイーズ吉田は、占い師。このシチュエーションがいままでにないものです。どうかなと思っていたのですが、全然、関係ありません。
いつもの瀬尾作品です。
前2作「ニベア」「ファミリーセンター」は、お得意の家族小説。
後2作「おしまい予言」「強運の持ち主」は主人公の成長小説です。
4作とも、淡々と書かれていて、それでいて何かしら心に残る。
決して、後味は悪くない。これは瀬尾ワールドそのものではないでしょうか。
全編に出てくる、恋人通彦との関係がいいんですね。通彦がまれに見る強運の持ち主とわかった吉田は、付き合っていた彼女から強引に奪ってしまう。
それは、そこまでしなくてもと思ってしまうんですが、その通彦との関係がいいんですね。
特別なことや、プレゼントじゃなく、日々の積み重ねの中で、例えば一緒に近くのお風呂用品を買いに行くことで、幸せを感じてしまうところなんか、そうなんだよ、そうなんだよと思ってしまいます。
余談ですが、最近、お風呂のマットを丸いものにしたのですが、四角だよなやはり、マットは…と思ってしまうわたし。
なかなかその本領を発揮しない、強運の持ち主の通彦ですが、彼が作る料理がまた楽しい。必ず違うんじゃないかという食材が入っている。
読んでいてどんどん楽しくなっていく。
そんな通彦との関係も、最後は直感が勝負。的確なアドバイスをするのです。
主人公を取り巻く人たちも、「おしまい予言」の武田君。「強運の持ち主」の竹子さん。ユニークですごくいいんですよね。
とってもとっても温かい。そして幸せの形についてうなずかせてくれ、家族への思いとそれを伝える方法や手段などそっと背中を押し、占いでアドバイスする主人公。本当に読者の背中も押してくれるそんな1冊です。
ただ「幸福な食卓」のインパクト。「図書館の神様」の爽快感などはちょっと弱い感じも…。
その辺を感じての3つ星です。あなたはどう感じますか。
それぞれの読み手が感じ取って欲しいと思います。