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 「卵の緒」は朝ちゃんと言うお父さんができることにより、母親から実の父のことを知らされる。ここがメインです。しかし、ただ悲しいだけではなく、この育生少年はとっても素直で母親もとっても温かくて、結婚して兄妹ができるのを機に育生に打ち明けるのです。きっと楽しい家族で幸せになるんだろうなー。育生の父親のことはとても悲しい過去だけど、母親や朝ちゃんの愛情で血のつながりだけが家族ではないというメッセージがあります。

対する「7's blood」は父の愛人の子どもである七生が突然家にくることにより、七子に憎しみをもたらせます。この七生君、一人で何でもできてしまう。小さいときから大人たちに好かれる術を知っているのです。そんな七生に対していらだちも覚えてしまいますが、だんだんとこの弟が好きになっていきます。
確かに子どもらしい無邪気さは全然ないんですよ。

愛人の子どもをなぜ母が呼んだのかがわかった時、その七子を思う愛情に涙します。
幸せとは一体なんなのでしょうか。家族が健康で楽しくすごすこと。もちろん、それもあるでしょうが、本当の幸せとはたとえ母は違う姉弟であっても、一人でも、両親がいなくても、離れていても、誰かと繋がって生きること、それも「幸せ」であるんだよと作者は言っているような気がします。

あとがきにあるようにこの作品は瀬尾さんの家族の状況が投影されている作品です。
「そこら中にいろんな関係が転がっていて、誰かと繋がる機会が度々ある。それは幸せなことだ」と瀬尾さんは言っています。まさにそんな思いの作品です。

本当にいい作品です。

この作品も心にジーンときました。家族の形はいろいろあれど、幸せとは形ではないんですよね。

「父さんは今日で父さんをやめようと思う」父さんはいった。母さんは家出中。兄、直は元天才。主人公佐和子を取り巻くこんなちょっと変わった家族と、ボーイフレンド大浦君との出会いからの中学から高校までを切なく描く。

形は連作短編なんだろうけど、結果、長編だろうと思う作品です。
冒頭でも書きました、父さんの言葉で始まる印象的なこの作品は、家族がある事件によって、離れ離れになるかならないかというような中、それぞれの思いが詰まって、かといって今の関係を決して壊そうとせず分かり合っていく、家族の物語です。

何といっても兄、直との関係がいいです。元、天才ですが今は農業。趣味はギター。彼と妹佐和子の関係が温かい。佐和子と母も。そして、父も。
あの出来事が無かったら、普通の楽しい温かな家族だった。それをわかりながら、暮らしている家族。その関係が読者に妙に安心感を与える。

しかし、それだけの話に納まらせないのが瀬尾さんの技量。あつかましい大浦君と佐和子の出会いの中で育まれる恋がどんどん大きくなっていき、いつしか主題になっていきます。
そして最終話は誰もが涙する話だと思います。そんな佐和子をそれぞれの家族がそれぞれの形で見守ります。父へ投げつけた一言が胸に染みます。しかし、誰も言い返さない。

何て胸に染みるんだろう。家族の幸せは形ではないんだよなー。と思わせてくれる作品です。あっ、そうそう直のガールフレンド(恋人?)小林ヨシコがいいんですよね。手作りシュークリームも泣かせるんです。
すべての方に読んでいただきたいそんな作品です。 カバーには「大きなものをなくしても、まだあった、大切なもの。」 まさにその通り、あなたにとって大切なものとは一体何ですか?そう問いかけて来ます。題名の通り、食卓がまた美味しそうなんです(母の料理も直の料理もいいんです)。
語ればネタバレになるし、語りたい衝動に突き動かされるそんな作品。とってもいいです。

占い師のルイーズ吉田。インチキ、いかさまと自分でもわかっていながら、相談に来る人たちの、背中をそっと押す、そんな占い師。相談に来る人たちとルイーズを取り巻く人たちが織り成す、ハートウォーミングな短編集。

瀬尾さん13ヶ月ぶり、待望の新作です。
期待を裏切らない、とても安心感に浸れる作品です。
主人公、ルイーズ吉田は、占い師。このシチュエーションがいままでにないものです。どうかなと思っていたのですが、全然、関係ありません。
いつもの瀬尾作品です。

前2作「ニベア」「ファミリーセンター」は、お得意の家族小説。
後2作「おしまい予言」「強運の持ち主」は主人公の成長小説です。
4作とも、淡々と書かれていて、それでいて何かしら心に残る。
決して、後味は悪くない。これは瀬尾ワールドそのものではないでしょうか。

全編に出てくる、恋人通彦との関係がいいんですね。通彦がまれに見る強運の持ち主とわかった吉田は、付き合っていた彼女から強引に奪ってしまう。
それは、そこまでしなくてもと思ってしまうんですが、その通彦との関係がいいんですね。

特別なことや、プレゼントじゃなく、日々の積み重ねの中で、例えば一緒に近くのお風呂用品を買いに行くことで、幸せを感じてしまうところなんか、そうなんだよ、そうなんだよと思ってしまいます。
余談ですが、最近、お風呂のマットを丸いものにしたのですが、四角だよなやはり、マットは…と思ってしまうわたし。

なかなかその本領を発揮しない、強運の持ち主の通彦ですが、彼が作る料理がまた楽しい。必ず違うんじゃないかという食材が入っている。
読んでいてどんどん楽しくなっていく。
そんな通彦との関係も、最後は直感が勝負。的確なアドバイスをするのです。

主人公を取り巻く人たちも、「おしまい予言」の武田君。「強運の持ち主」の竹子さん。ユニークですごくいいんですよね。

とってもとっても温かい。そして幸せの形についてうなずかせてくれ、家族への思いとそれを伝える方法や手段などそっと背中を押し、占いでアドバイスする主人公。本当に読者の背中も押してくれるそんな1冊です。
ただ「幸福な食卓」のインパクト。「図書館の神様」の爽快感などはちょっと弱い感じも…。
その辺を感じての3つ星です。あなたはどう感じますか。
それぞれの読み手が感じ取って欲しいと思います。

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