<喪失から再生へ。人との出会いが人生を変えていく>
敏子は59歳。夫隆之は風呂場で急死。その後、夫が残した携帯電話から、愛人がいたことがわかる。さらに、息子はこの機会にアメリカから帰り、同居を迫る。たった一人、残された敏子の選んだ道とは。
500ページ弱の厚い本も、結構、すんなり楽しむことができました。
意外な桐野作品に、本当にびっくりです。内容も非常に面白い。夫の急死とともに、発覚する愛人。裏切りと喪失感、さらに孤独感。頼りにしていた息子達も財産のことしか目がいかない。
途方にくれる敏子は4日間の家出をしてしまう。家出先は何とカプセルホテル。それがこれからの人生における第1歩。
ずっと、息子と娘を育て、夫隆之に尽くしてきた敏子にとって、自分の生活を守ることが自分の役目と思っていたのですが、初めて世間の荒波に飛び出すことになります。カプセルホテルでのフロントマン、夫の交友から入ったサークル、愛人との確執など出会いとそうした関係の中から、今後の自分を見出していくんです。
人との出会いから感じる新鮮さや、人への憎しみや嫉妬。
59歳にして知ることになります。そうしたことを経験する敏子は、精神的にもたくましくなり、美しくなっていきます。
敏子が数ヶ月間で経験することは決して、楽しいことではありません。苦しいことばかりですが、出会いが敏子を変えていきます。桐野さんは、そんなに世間は甘いものじゃないという現実を淡々と書き、まだまだ人生捨てたもんじゃない、これからだということをこの作品でいいたいのだろう。
主人公敏子が59歳にして、自分を探し、活き活きと生きていく姿勢がじわりと感動を呼びます。
本当に思い通りの人生にはならないし、素晴らしい人生と余生は待っていないかもしれない。
それがわからないから、主人公敏子に共感するのだろうと思います。
あなたが敏子だったらどう生きますか?
それを桐野さんは、問いたかったのかもしれません。
新聞に発表された作品ということもあり、犯罪を描いたものではありません。しかし、淡々と描くリアルこそ、桐野さんの真骨頂かもしれません。
ぜひぜひ、読んでみて欲しい1冊です。
<ショコラさんから再びブックバトンが回ってきました(5月13日)>
「鬼でも負ける宗教勧誘」のショコラさんからブックバトンが回ってきました。今回で2回目です。
お回しするのも、なかなかむずかしいので、今回はわたしだけの回答にさせてください。
【Q1.持っている本の冊数】
自宅におよそ450冊、田舎に200冊、計650冊。
引越しにより、泣く泣く、何とか50冊を処分しました。
【Q2.今読みかけの本】
はい、この作品です。桐野夏生さんの意外な一面のこの作品。
59歳にして夫が急死。途方にくれる主人公。子ども達も自分のことばかり考えている中、自分の将来と生きがいを見出す物語。
これはいいです。
年齢層によって、違うんでしょうけど、わたしは年齢層で買いの1冊。
面白いし、どんどん精神的に変わって行く主人公に、前向きな気持ちになる1冊。
後、残り半分です。(つづく)
<ささやかな日常からの再生と希望の物語(5月3日)>
やっと、回ってきました。半年待ち!
しかし、このゴールデンウイークで読めるかどうか。
内容は、60歳を前に夫を亡くした妻の、再生と希望の物語らしい。
桐野さんらしくないとは思いつつ、やはり、読みたい。
しかし、相変わらずの超多忙中!!