<男と並んで愛誓うより、女と並んで笑いを取る>
漫才コンビのアカコとヒトミ。初ライブは全く受けない。打ち上げでは先輩芸人を殴り倒してしまう。28才にして貧乏。今はぜんぜんさえないけれど、漫才に賭ける情熱は負けない。きっといつか、笑いを取ってみせる。
山本幸久さんのデビュー作です。この作品で小説すばる新人賞を受賞されました。
まずこの作品、この個性的な二人を主人公にしたのがいいですね。身長180cmのヒトミと豆タンクのアカコ。まさに漫才をするために生まれてきたキャラ。その二人の個性が全開しています。
ヒトミの愛車はレッドバロン。実は十数年間も乗っている自転車。貧乏ゆえに自転車で移動しているんですよね。
一方のアカコは金持ちのお嬢さん。血は繋がっていないが、祖母の頼子さんと同居。この頼子さんしゃきっととして、いろんなことを教えてくれます。そして料理がうまい。だからヒトミはしょっちゅうアカコの家に行っています。
漫才ネタが目の前で聞いているように面白いんです。
そんな二人もついにエヌ・エッチ・ケーへの出演が決まります。7分間のネタで勝負!ですがあまり面白くないことに、気付きます。そんな時に二人は大ゲンカをするし。漫才どころかコンビの危機を迎えます。
先輩芸人の乙と娘のエリちゃん、デブヨシなど芸人さんを取り巻く人たちも個性的。エリちゃんは本当に健気で可愛い。ほろっとさせられます。そんな人たちに支えられ、二人は漫才を続けます。随所に二人の出会いも描かれ、ラストにタイトルの意味も分かる仕掛けです。うまいなー、この仕掛け。
そして、もう一つこの作品の良さは、アカコが即興で作る歌です。大して意味もないのですが、これが可笑しい。世田谷線の歌は特筆。
アカコトヒトミの主題歌もいい。
♪野を越え山越え越えてしまった適齢期
男並んで愛誓うよりも
女と並んで笑いを取りたいと
心を決めたその日から
二人は漫才師になりました
愛、受取るよりも
笑いで受取る
それが二人の幸せなのよ♪
と、こんな調子です。
二人の漫才ネタはもとより、会話と掛け合い、心理描写が実に可笑しい。
読んだあと、きっと元気になる痛快青春小説です。
【49冊目/集英社文庫/
】
<夢と笑いとパワーあふれる傑作青春小説>【9月5日】
エビノートさんのまったり読書日記の8月のオススメ本がこれです。ちょうどいいタイミングでサービス券があり、また購入意欲とも重なり、ダッシュで書店へ。さっそく入手しました。今現在、読んでいます。
なかなかいいですよー、エビノートさん。ありがとうございます。
歌が楽しいですよね、漫才の掛け合いもいいです。今から後半戦です。