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<帰りたい、あの頃に>

幼なじみの死をきっかけに集まった、あの頃をすごした友人達。ダムに沈んだ村に郷愁を感じながら、現実を生きている。村に再び帰りたい。あの頃に帰りたい。
失った過去へのノスタルジーと、今を生きることを教えてくれる表題作をはじめ、中編3編を所収。

何といっても、表題作が良いです。
30代半ばを過ぎて、家庭や仕事に悩みを抱えて生きている人たち。そうですね、この登場人物たちは、紛れもなくわたしたちなのですね。

友人の死をきっかけに、再会することになり、ダムに水没した村のホームページを見ることになります。そこには幼い時代を一緒に過ごした仲間や村の人たちの生き生きとした生活があったんです。
おりしも、ダムの水が干上がり、あの村が現われる事態に。主人公コンタは友人の遺骨を伴い、帰ることになります。そして、待ち合わせ場所に集まる友人たち。
うまいです。生活を抱え、今を精一杯、奮闘している主人公達。こういう話を書かせると本当に重松さんは上手いと思います。
「帰りたい」と何度も言う、主人公。しかし、反面、「ノスタルジー禁止」と口にしています。
昔への郷愁と現実とのギャップ。そこがこの小説のキモですね。

「ライオン先生」は、教え子と恋に落ち、結婚したものの妻は若くして亡くなります。熱血教師だった昔を取戻すために先生がとった行動とは。

「未来」はとっても重い話。いじめを苦に自殺した子どもが残していた遺書に、弟の名前があった。重いです。誰もが被害者と加害者の関係になってしまう。そんな時代なんです。

それぞれの作品にそんな時代が切り取られています。ぜひ「カカシの夏休み」をぜひ読んでみてください。
わたしは、表題作が良すぎて、あと二作が印象薄と感じてしまいましたが。

<永遠なんてどこにもない。死を題材に生を問う。落涙必至の傑作>

何気ない日常から、ある日突然、愛する人を失う人たちはどうするか。誰でも訪れる死、その日をあなたはどう迎える。短編集。

こんなに泣いた本はいつ以来だろう。しかも号泣でした。
とめどなく流れる涙。それでも読み続けなければいけない。それは重松作品を読む義務というものだろう。とっておきのラストがあるわけでもない。しかし、読んだ後、生きることや人生ってこういうものなんだなーと考えてしまうのが重松作品であると思います。
この作品も例外ではない。誰もが避けて通りたい「死」をテーマに暗く、重く、辛い作品ばかりです。
ここに収められた作品は、どの主人公たちも死を受け止めていくんですよね。自分がその日を迎えるまでどう過ごしていくのだろうか。

愛する人を亡くした人が読むと、「その日のまえに」「その日」「その日のあとで」が情景のように、出てきて。その死を思い出しがながら、自分と重なり合いながら読んでしまうので、わたしはグチャグチャに泣いてしまいました。

わたしたちが敬遠する、「死」とはどういうことなんだろうか。それは「生」を思うことなんですね。
ちゃんと重松さんは答えを作品の中で用意しています。それは「考える」ことなんですね。昔を考える、今を考える、そして「その日」を考える。なくなった人たちも、残された人たちも。

永遠なんてない、いつか迎える「その日」を、わたしたちはどう迎えるのでしょうか。それも考えつつ、今をもっと、一日一日を大切なものとして受け止めていかなくてはと思います。とっても辛く、重い作品集です。一つひとつの作品が単独に泣けます。
しかし、重松さんは、ちゃんと最後に繋がるようにしています。
本当にうまい。ストーリーも文章も。流れるような文体と、美しい情景描写。会話の妙。まさに名人級のこの作品集をぜひ手にとってもらいたいと思います。

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