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評価:
重松 清
文藝春秋
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<永遠なんてどこにもない。死を題材に生を問う。落涙必至の傑作>
何気ない日常から、ある日突然、愛する人を失う人たちはどうするか。誰でも訪れる死、その日をあなたはどう迎える。短編集。
こんなに泣いた本はいつ以来だろう。しかも号泣でした。
とめどなく流れる涙。それでも読み続けなければいけない。それは重松作品を読む義務というものだろう。とっておきのラストがあるわけでもない。しかし、読んだ後、生きることや人生ってこういうものなんだなーと考えてしまうのが重松作品であると思います。
この作品も例外ではない。誰もが避けて通りたい「死」をテーマに暗く、重く、辛い作品ばかりです。
ここに収められた作品は、どの主人公たちも死を受け止めていくんですよね。自分がその日を迎えるまでどう過ごしていくのだろうか。
愛する人を亡くした人が読むと、「その日のまえに」「その日」「その日のあとで」が情景のように、出てきて。その死を思い出しがながら、自分と重なり合いながら読んでしまうので、わたしはグチャグチャに泣いてしまいました。
わたしたちが敬遠する、「死」とはどういうことなんだろうか。それは「生」を思うことなんですね。
ちゃんと重松さんは答えを作品の中で用意しています。それは「考える」ことなんですね。昔を考える、今を考える、そして「その日」を考える。なくなった人たちも、残された人たちも。
永遠なんてない、いつか迎える「その日」を、わたしたちはどう迎えるのでしょうか。それも考えつつ、今をもっと、一日一日を大切なものとして受け止めていかなくてはと思います。とっても辛く、重い作品集です。一つひとつの作品が単独に泣けます。
しかし、重松さんは、ちゃんと最後に繋がるようにしています。
本当にうまい。ストーリーも文章も。流れるような文体と、美しい情景描写。会話の妙。まさに名人級のこの作品集をぜひ手にとってもらいたいと思います。