一定期間更新がないため広告を表示しています

  • -
  • -
  • -
  • by スポンサードリンク

評価:
初野 晴
角川書店(角川グループパブリッシング)

 「退出ゲーム」の続編です。
ハルタとチカは弱小吹奏楽部。目指すは吹奏楽の甲子園、普門館。日々、練習を積み重ねるハルタとチカの周りで起こる、可笑しな面々と日常の謎を解いていきます。
 
おみごと!前作「退出ゲーム」で驚かされ、満を持しての第2弾なのですが、期待を裏切らない面白さだったですね。ミステリーの部分は少し落ちたような気もしますが、それでも青春度はさらにアップ。青春小説と読めば、かなり面白いです。

相変わらず、この高校の面々はおかしい奴が多すぎる。逃げ回っている地学研究会の部長、初恋研究会代表など、またまた変人キャラが増えていきます。増えていくのは変人キャラだけではなく、吹奏楽部の面々も事件を通して、集まっていきます。パートも確立しつつ、いよいよ普門館への挑戦が始まります。

そんな中で、起こる日常の謎。
プロを目指す天才少女、片瀬は音楽室で探したものとは…「スプリングラフィー」。
地学研究会は予算を放棄して、行っている活動とは…「周波数は77.4MHz」。
名門、藤が咲高校では、1週間ごとにクラス替えが行われていた。その真相とは。…「アスモデウスの視線」
片瀬の伯母、直子が依頼したのは、あろうことか初恋研究会。伯母の初恋の相手とは?…「初恋ソムリエ」

わたしは、何と言っても「アスモデウスの視線」が好きです。これは、印象に残る作品でした。何せハルタとチカは潜入捜査までしてしまうし。人間の悪意に嫌悪させられますが、優しさに触れて安心させられる、そんなお話です。

ますます、リーダーシップと音楽の腕を上げていくチカ。次はどんな成長を見せてくれるのでしょうか。そして、恋の行方も気になります。草壁先生の過去も説明してもらわなければならないし。
第3弾希望します。

評価:
初野 晴
角川グループパブリッシング

JUGEMテーマ:読書

 チカは高校一年生。廃部寸前の弱小吹奏楽部のフルート奏者。ハルタはチカの幼なじみ。吹奏楽部のホルン奏者。廃部の危機に直面しつつ、日々練習に励む二人。しかし、校内の難事件に次々と遭遇するはめに。存続をするために、二人は難事件を解決しなければならないのだが…。

化学部から盗まれた劇薬の行方を追う「結晶泥棒」。
六面全部が白いルービックキューブの謎に迫る「クロスキューブ」
謎の色エレファンツ・ブレスを探せ!「エレファンツ・ブレス」
あと、表題作の4編が収められています。

これ、青春ユーモアミステリというジャンルなのでしょうけど、ミステリ部分が思いのほかしっかりしています。
表題の「退出ゲーム」はその代表作かもしれませんね。サックス奏者引き抜きのために、対決することになった演劇部と吹奏楽部。演じるのは、登場する人物を退出させたら勝ちという即興の劇。これがめちゃくちゃ面白い。
知恵を働かせ、役者を演じるチカとハルタと演劇部。頭脳戦を制するのは…。
これだけでも読んでみる価値あり。しっかりミステリしています

このチカとハルタの二人の掛け合いが絶妙なんですね。先輩や生徒たちは変な人ばかりだし。笑えますねー。
二人が思いを寄せるのは同じ人という設定もかなりおかしいです。ハルタがその人を見る目に、嫉妬するチカ。大笑いしてしまいました。

どうやら、続編がもうすぐ出るんですね。笑えるばかりではなく、切なさも、喜びも含まれ、社会的なことも含まれているんですから、まさにミステリの醍醐味と言っていいでしょう。

 <生者が死者の遺志に思いを馳せている限り、歴史は歪まない>

最初に読んだのはいつのことだったでしょうか?かれこれ、12年前くらいでしょうか。

河時根は第2次大戦中、朝鮮から強制連行され、九州の炭鉱に送られ、過酷な労働を強いられます。それは、想像に絶する非人間的なものだった。暴力と辱めを受けながら、食料もまともに与えられず、賃金もピンはねされる。そして、逃げれば監視の目とすさまじい暴力。働けば炭鉱事故の恐怖。こんな状態で彼らは、祖国に帰ることだけが希望として働いています。
暴力、事故で次々と倒れていく仲間たち。そして、生き延びるのは同じ民族が管理者として、仲間を見張ること。

それでも連行された者は、改善を求めて、炭鉱に行かないストライキを決行します。そこで主人公が唄う、ただひとつの歌が‥。ここで泣いてしまうんです。
次から次に苦難が襲います。しかし、これは事実、日本が行ってきたことなんです。いや、もっとひどいことをしてきたのだと思います。
だから、この事実を決して忘れないため、作者はこの作品を残したともどこかで読みました。決して消し去らない歴史の事実。

「私たちは未来から学ぶことはできない。学ぶ材料は過去の歴史のなかにしかない。…自分に都合の良いように、粉飾した改変を加えた歴史からは、束の間のつじつま合わせしか生まれて来ない」
まさにそのとおりだと思います。

形はミステリーなので、これ以上は語ることができませんが、主人公を動かしているのはこの国に対する恨(ハン)。そして、三たび海峡を渡ることになったのです。
隣国との関係を考えさせられ、戦争の罪を考え、そして、今現在の日本を考える格好の作品です。
涙なくしては読めない傑作ですが、泣いてばかりはいられない事実がこの作品にはあります。 

<アンフェアなのは、誰か>

公園で会社員と高校生が殺された。現場には「アンフェアなのは、誰か」という栞が。出版社に届けられる「命を救いたければ、小説の続きを落札せよ」という要求。刑事、雪平は犯人を追っていく。

まずは、良いところから書きましょう。この作者のデビュー作であるこの作品は、スピード感が抜群にうまいと思います。数多くのテレビドラマを手掛けてきた作家さんならではでしょう。
次から次に起こる連続殺人事件。謎の提示。
事件を追う刑事たち。息も尽かせぬ展開といっていいでしょう。

捜査する刑事たちも、実に魅力的。特に主人公、雪平夏見が圧倒的な存在感を持っています。バツイチで娘には嫌われている。
抜群のプロポーションと明晰な頭脳を持ちながら私生活はグータラ。体力は人並みはずれている。「無駄に美人」なのです。
そんな雪平のマネージャーともいえる、若手刑事安藤。実にいいんですよ、このキャラたち。

と、ここまではいいところだったんですが、わたしが読んでどうかなと思ったところも書かねばいけませんね。スピード感があると書きましたが、裏を返せば、人間の描き方がどうも薄く感じざるを得ませんでした。雪平の過去や、課長との関係。犯人の描き方などなど。もう少し厚くしても良かったのでは。プロットがジェットコースター並みに面白いだけに実に惜しい気がします。

ドラマ化され、時々、見ていたのでそちらの印象が強かったのかもしれませんが…。ドラマは抜群に面白かった。期待して読んだのですが…。
それと「動機はいったい何」とも思えてしまいます。どうも納得性がない。犯人は「推理小説」を売りたかっただけなのでしょうか?

良いところ(期待するところも)の反面、どうも悪い面が気になって仕方がありませんでした。
とこういいつつ、このシリーズの二作目も読んでしまうんでしょうね。

オンライン書店ビーケーワン:いつか王子駅で

<現実と回想の中で、昭和の香りが漂う>

えーと、この作品はSNS「本を読む人々。」での読書会の11月の課題本でした。こんな事でもないと、おそらく手を出さなかった本だと思います。
それと、この作者は「雪沼とその周辺」という名作があるんですけど、その前に書かれた作品です。

正吉さんが消えた。カステラの箱を残して。時間給講師の私を取り巻く人たちや、古書、童話、名馬。回想と現実を織り交ぜ、優しい視線から見つめる小説。

いやー、この小説は純文学なのでした。純文学は「雪沼とその周辺」以来かなー。それほど手ごわい小説でした。180ページ弱なのに、中々、進まなかったのです。
その理由は、一つの文章が長い!これが最も大きな理由です。
しかし、慣れるにしたがって、この長さが心地よくなるから不思議。
物語の中心は、カステラを残して消えた、正吉さんなのだと思っていたのですが、いいのか悪いのか、これが違うんですよね。わたしははっきりして欲しかったのですが。

むしろ、正吉さんの話から飛躍する回想の数々が中心の小説なのではないでしょうか。様々な本が出てきます。それも読んだ事のない作品。しかし、読んだ事があるかのように錯覚してしまいます。それほど、本に対する愛情があるんです。
懐かしかったのは、安岡章太郎「サーカスの馬」。この作品は教科書にあったような気がするんだけどなー。本当に懐かしいんです。

そして、昭和の名馬に寄せる愛情。特に悲劇の名馬テンポイントの話は、とってもジーンと来ます。競馬好きの方はたまらないんでしょうねー。しかし、競馬に興味がないわたしも自然と入ってくるから不思議。これも、この作者の力量なんですよね。

住んでいる大家さんの一人娘、咲ちゃんが何とも可愛いし。走る咲ちゃんの描写がすごく、瑞々しい。ランニングの途中で一緒にもんじゃ焼きを食べたりします。これまた可愛いんですよ。

さて、正吉さんは現われるんでしょうか?
最後まで期待して読んだのですが、最初に書いたとおり、それは主題ではありません。正吉さんと私を取り巻く人たちの物語として読んでください。さまざま人が気になっていくんです。
「いつか王子駅で」というタイトルも実に粋です。
本当に優しい作家さんですねー。慣れるまで苦労しますが、回想と現実がすっと心に沁みてくるそんな小説です。これも列記とした小説なんですよね。
閉じるのが惜しくなった作品です。
【新潮文庫/馬馬馬

オンライン書店ビーケーワン:忘れないと誓ったぼくがいた

<君のことは絶対、忘れない>

この作品はいいといわれる人と、イマイチと評価される人が分かれていましたよね。わたしはいいという評価を信じて、読んでみました。
どちらかというと、わたしにとって、後者の方に入るでしょうか。いわれるほど泣けませんでした。

タカシはメガネショップであずさと出会う。とっても不思議な少女に魅かれていくタカシだが、あずさからある秘密を聞かされる。それは自分は「消える」というのだ。

運命の出会いを果たすタカシとあずさ。互いに魅かれ合っていきますが、あずさには「消える」、つまり存在がなくなるという秘密がある。あずさに関わった人たちからもその記憶が消失しているという。しかし、タカシにはその記憶が誰よりも残っている。
ここからタカシのあずさを忘れまいとする努力と必死の救出が始まります。
しかし、しだいにあずさが消える時間は長くなっていくのです。

こんな一節、「彼女に腹を立てたり、傷つけられたと思ってウジウジしたり、わけがわからなくてイライラしたり、そういう悶々としたものを山ほど抱えていたはずなのに、なんだかそんなものは一瞬で吹き飛んでしまった」
こんな気持ち、恋する気持ちは誰にもあったではありませんか。またはありますよね。

切なすぎるて、タカシがかわいそう過ぎる。必死にノートに書き留めていく姿、読み帰す姿に感動します。そして、いよいよそのときが…。
切ないストーリーです。
恋愛小説にしたことも、間違いではなかったと思います。
しかし、なぜ消えるのかがどうも気になって、帰ってくるんだろうと思って読んでしまいました。

失敗ではなく、わたしの読み方がそうなんですよね。もうひとつは最初に消えたところ、時計屋は何の意味があるんだろう。どうも気になります。どなたか説明して欲しい。

ともあれ、この小説は成功していると思います。ラストも泣けます。しかし、のめりこんで読めなかったのは、わたしの感性のせいでしょうね。
ただただ、タカシに同情するのと可哀想だと思って読んでしまいました。

それから、すすめて下さったみなさん、ごめんなさい。いい感想にはなりませんが、注目する作家には間違いありません。
【新潮社/メモメモメモ

オンライン書店ビーケーワン:LOVE

<古川流都市の描き方。犬に対する猫的アンサー>

はっきりいって、よくわからなかったというのが率直な感想です。
短編なのか、連作短編なのか。長編なのか。本当によくわかりません。

東京、そこは様々な一面を持つ都市である。その東京の一部を切り取って描く古川流、都心の描き方。老若男女、はたまた動物たちを活写。

最後までわからなかったなー。ギターを弾く男、猫を数える少年、犯罪集団などなど。そして猫たち。なんなのだろう。
わたしはこの作品は猫一本に絞った方が良かったなー。
もっともこの作品で三島由紀夫賞を受賞したのだから、そうもいっていおられない。文体の斬新さはさすがと思わせてくれました。
ただただ、わたしにはのめりこめなかった。

しかし、あきらめません。この作家の挑戦をわたしは買います。「LOVE」というタイトルが何を言いたいのかは、読んだ人で判断してください。
のめり込んだところもあったことは否定できない1冊です。
【42冊目/祥伝社/猫猫

<案外早く、図書館で借りました(6月27日)>
三島由紀夫受賞で、大人気だろうと思いきやこんなに早く、借りる事ができました。しかしなー、今、絶不調期なのでどうかなー、読めるのだろうか。
次に読む本にします。

<第19回三島由紀夫賞受賞作。文壇の珍獣はどこに向かうのか(6月5日)>
第19回三島由紀夫賞にこの作品が決まりました。
この方、「ベルカ、吠えないのか?」で直木賞候補に。
様々な才能あふれた作家さんです。
6月3日付け朝日新聞「ひと」欄でも紹介されています。
この方、午前中から執筆、空手などで心身を鍛え、感受性を研ぎ澄ますそうである。
「読むだけで危険、文学をそんな地位に戻したい」という作者から目が離せない。

【この作品を取り上げられたブロガー】
ぱんどら日記
まったり読書日記

オンライン書店ビーケーワン:ツ、イ、ラ、ク

<遅れましたけど、ぶっとぶ傑作ですよね>
心理学とタイと読書日記のwilfredrbionさんから旧館の方にTB頂いていたのですが、やっと新館の方からTBさせていただきます。
姫野ワールドに触れた最初の作品が、こんな傑作だなんて。
独特の作風の中に、誰もが抱いた恋心と切なさが同居しています。
この傑作をたくさんの人に読んでいただきたいなー。
レビューは↓を。

<2005年11月5日/学校学校学校学校
またしても初めての作家さんです。しかし、この作風は一体なんなのでしょうか。様々なものが、まざってはいますがちゃんとした恋愛小説です。そして、泣きます。この人の才能もまた凄い。本当に力のある作家さんです。

主人公は隼子。長命小学校2年からの彼女の周辺を丁寧に描いていく。友情、目覚め、初恋、恋愛、性など少女から大人の変化。中学2年生の夏、産休代替教師河村との出会いは、身も心も溶かす恋だった。

最初この小説はどこに行くのだろうと、なかなかペースに乗れず、苦労しました。
あるときは新撰組の例えが出てきたり、本の文章で例えてみたり。数式も出てくる。アンケートも出てくる。そんな中でこの小説の行き先が見えませんでした。しかし、一人の教師との出会いからドラマは加速します。

狂おしいほどの官能と恋心。若かった河村もその恋に溺れていきます。
しかし、そんな恋も長続きはしません。お互いの将来を見つめたとき、その結論は「別れ」しかありません。そう決意したとき、事件が起きます。クラスメートからの仕打ち。

学校から追われるように去っていく河村。卒業後、町にいられず、大阪の高校にいく隼子。
まるでゴミ箱を空にするように(コンピューター用語も出てきます)。
次は高校生活を描くのかと思って読み進めると大間違い、いきなり20年後に飛びます。それぞれに齢を加え、大人になっている、同級生たち。その生活も淡々と綴られています。
隼子は東京で会社に勤め、淡々と生活しています。あの頃のことなどなかったように。その会社の組織の変化に伴い、社員のプロフィールを見たとき発見するのです。「河村」の名を。しかし写真ははるかに若い男。ここで、終わりかと思いましたが…。

最後は涙、涙です。こんなにも切なくて少女の心を描いた作家はいなかったと思います。この作品の成功はあくまで第3者として淡々と書ききったことです。それがいろんな引き出しの中から、いろんな例えを引用しても決してわずらわしくないのです。

恋のかたちも初恋、友達の恋、隼子の恋、最後は不倫まで出てきます。
姫野さんは最後にこう括っています。「それが恋というもの」。
こんな少女達の話に引き込まれること間違いなし。現代の少女達とはこういうものかと驚くよりも、きっと誰にもあった恋心を思い起こさせる小説です。

1

PR

Calendar

S M T W T F S
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31      
<< March 2024 >>

blog list

最近読んだ本

よしの最近読んだ本

Archive

Mobile

qrcode

Selected Entry

Comment

  • ダブル・ジョーカー 柳 広司
    やっくん
  • 静かにしなさい、でないと 朝倉かすみ
    よし
  • 静かにしなさい、でないと 朝倉かすみ
    ゆう
  • 一瞬の風になれ 第一部 --イチニツイテ--
  • 風の影〈上〉
    ゆこりん
  • 一瞬の風になれ 第一部 --イチニツイテ--
    ゆう
  • 一瞬の風になれ 第一部 --イチニツイテ--
    リベ
  • シャドウ 道尾秀介
    よし
  • モノレールねこ 加納朋子
    よし
  • フィッシュストーリー 伊坂幸太郎 
    よし

Link

Profile

Search

Other

Powered

無料ブログ作成サービス JUGEM