<漫画のためのマンガ本>
「金魚屋古書店」。それは伝説の漫画古書店。誰かが探している本はほとんどがこの店で見つかるといわれている。そんな古書店を預かる店長、菜月、斯波さん。ここを訪ねる人たちの物語。
いやー、懐かしいです。このマンガは漫画のためのマンガです。出てくるのはマンガだらけ。「Dr.スランプ」「三国志」「モーレツア太郎」などなど。
幼いとき、若かりし頃、貪るように読んだマンガばかり。
そして、1話ごとに主題となるマンガが出てきます。もちろん読んだ事のないマンガも。
「人の身体がたんぱく質やビタミンの成分でできているように、人の心は時間と思い出の成分でできている」
「だから自分の昔を思い出すことは、今の自分の本当を知る事」
と第1話「思い出の成分」で菜月がいいます(どうも店長の言葉らしい)。まさにその通り、人の心は時間と思い出です。だから、昔話では盛り上がるんですよね。今の自分がささくれ立って、決して上手くいかない人生だと思っている時、ふと昔に立ち寄る事が大切なんだよと思わせてくれる作品集です。
わたしが好きなのは第2話「北斎漫画」。美術学校に通う、二人の生徒。一人は絵は描きたいが、才能を出せない。もう一人は才能はあるが、絵を描くことに価値を見出せない。出会った漫画が「百日紅(杉浦日向子)」。葛飾北斎を描いた漫画を通して、それぞれが目標を見つけていく。そして砂浜に書いた絵は?
巻末の金魚屋古書店雑記帳もあわせて読むと、なんとも感慨深い。作者杉浦さん自身も作品に投影されているそうです。
いろんな漫画の蘊蓄も楽しめます。最後の最後までマンガ、まんが、漫画。
漫画のためのマンガ本です。
読んできたマンガを通して、あのときの自分の姿を思い出す。本もですが、マンガもいいよなーと思える作品です。
もしこんな古書店があれば、一度はいってみたい。
そんなことを思わせてくれる「金魚屋古書店」シリーズの開店です。
【小学館NIKKICOMIX/
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