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JUGEMテーマ:読書
桜木さん三作品目。
暗いとか、重いとか、特にこの作品ではそう言われてもしかたないかもしれません。
でもでもそれを凌駕するストーリーと、ぞくぞくする展開にわたし、たまりませんでした。好きですこの作風。

さて、話は、北海道、釧路。
民営化された図書館の館長と、地元では著名な書道家。館長の妹と書道家の妻という四人が絡み合いながら、物語は進んでいきます。館長の妹は知的な障害だけども、書道に最たる才能をもっている。書道家の夫婦は母を介護している。その母親も一癖ありと。展開は四人の思いの中で進んでいきます。

すなわち、お互いの中の「嫉妬」。
そうです、嫉妬がテーマなのです。才能への嫉妬。妻への嫉妬。相手への嫉妬などなど。
嫉妬から生まれる心の動きが最大の読みどころかもしれません。

意外なところであっと思わせていただきながら、ミステリー的要素もふんだんに盛り込みながら。
いやいや、才能への嫉妬が凄まじい。

展開的にはえーっというところもありましたけど、そうしないとラストまで持って行かれなかったと思いますから、それはそれでこれは良しとしますよ、わたしは。

「ホテルローヤル」も素晴らしかったけど、長編でこのテーマで読ませる桜木紫乃という作家に二重丸です。
この作風、この路線で素晴らしい作品に出会える日も遠くないと思います。
ますます期待の作家さんとなりました。
誰かと語りあいたいような作品です。

『ローカル線で行こう!』系のお仕事小説と思い、さらにデパートという舞台のなかでのミステリー系小説とも思いながら読み進めましたが、まんまと期待を裏切られました。ただし、面白くないんじゃないんですね。
ユーモアパニック小説というかコメディスリラー?小説というか、なんとも分類のできない小説ですね、これ。強いて言えばドタバタミステリーか。

売り上げもままならないデパート。土曜日の閉店間際、良からぬことを企む店員、自殺を企てる中年、行き場のない高校生カップル、道を外した元刑事がデパートに居残り。夜のデパートを舞台に、社長や警備員までをも巻き込み、ハチャメチャなストーリーが展開する。

これ、伊坂さんの小説を読んでいる感覚。他の作家さんと比較してはいけないんでしょうけど、本当にそう思いました。
だからといって、面白くないということはありません。上手いんです。別々の話が終わりにかけてまとまっていくその快感と言ったら、この上ない。

閉店した後のデパートの裏側を垣間見たような気がします。警備するのも大変でしょうねー。
いずれの登場人物もある事件に関わりがあるというのも話としては面白いですね。
ラストも良いです。この伝統あるデパートのテーゼが盛り込まれており、庶民に親しんでもらうデパートにしなくてはいけないというもの。
ただし、百貨店を含むデパートの現在を考えたら、相当厳しいですよね。高級品志向というイメージがあったのですが、郊外に立ち並ぶ大型ショッピングモールが、それを脅かしているんですね。百貨店が生き延びるにはどうすればいいのか。裏事情も絡みながらも、考えさせられました。

子どもの頃、デパートの屋上に行って遊んだ。それももはや遠い昔。
がんばれ、デパート。
デパートへ行こう!

JUGEMテーマ:読書
この作者さん、わたしは大好きで、ずっと読み続けている作家さんです。
本来なら、直木賞はとっくのとうに受賞されていてもなんら不思議ではない実力者。昔なら小役人シリーズそしてアマルフィーは映画の原作になるなど決して読んで損はしない作家さんです。さらに最近は時代小説も書いていらっしゃる。
そして、これは社会小説?

ジャンル分けするなど野暮というものですね。
東北の第三セクターはもりはら鉄道は、年間二億円の赤字路線。起死回生の策として、新幹線の伝説的なカリスマアテンダント、篠宮亜佐美を社長に抜擢する。しかし、赤字の体質に慣れ切ってしまっている社員は、やる気なし。県庁から出向している副社長は自分の身の保全しか考えられない。
さて、もりはら鉄道は再生することができるのでしょうか。ここが大きな話の柱ですので、その数々のアイデアは書いてはいけませんよね。

これだけではないのがエンターティメント作家の真保さんの凄いところ。もりはら鉄道の成功をじゃま立てするような事件が矢継ぎ早に仕掛けられます。これが後半のキモ。
さて、その真相とは?

鉄道再生の物語と思いきや、とんでもないところに話を引っ張られます。しかし、最後はちゃんと終着駅に。新社長のバイタリティーに周りの社員が引っ張られていく姿は痛快。元気が出てきます。
地域の発展こそが鉄道の発展。地域と共になんていう語句が並びます。今やかっこいいんですね。
地方自治の問題とも絡み合いながら、この会社は果たして再生できるのか。
ノンストップの特急小説です。
やはり、真保さんにはずれはありません。

 『あやまち』のシリーズ新刊!
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評価:
桜庭 一樹
角川書店(角川グループパブリッシング)

何と圧倒的な物語なのでしょう。
カバーデザインや挿絵が実に美しく、ページの本分も花飾りで飾られています。実に美しい本に仕上がっていますが、それとは裏腹に、中味は実に濃厚。
退廃的、官能的、背徳的、まったく予測不可能な一族の物語となっています。

大人の童話と見れば、実に桜庭さんの作品らしいですよね。
「1,2,3、悠久」で物語の幕が上がります。この四姉妹の母の美しさからなのですね。
美しさから一体どこにたどりつくのでしょうか。

その一族の何とも言えない背徳的な美しさ。
一族の歴史があり、歴史に片寄せる戦争があり、一族を流れる血が脈々と繋がれているところが、この作品の大きなキモかもしれません。
淡々と、童話的のように語られますが、何がどうして。童話などではありません。ドロドロ感が漂い、どこに終着するのか分からない展開です。

こうした物語に嫌悪感を覚えてしまうという気もしていましたが、その物語の力に圧倒。薄い本だとタカを括ってかからないように。
ここに桜庭さんの凄さがあります。
爽快感とは程遠い内容ですが、わたし、この物語憎めません。
作家の力で読ませる作品と見ています。

この世界、ぜひ、堪能あれ。

JUGEMテーマ:読書

上役ともめ、ぶんなぐり左遷された25歳の畔木。左遷された先は、会社も持て余すほどでかい、旧家の管理人。そこで、出会う人々と坂城部長の手を借りて、一大プロジェクトを企画するのだが。
 
庭の手入れをし、壊れたところを修理していくんですが、自分に合っていることを見出します。
出会う人々が可笑しいんです。
元ウインブルドンテニスプレーヤーのおじいさん。天才ピアノ少女。変な調律師。そして、なぜか長居する、坂城部長。一番変なのは、一緒にやってきた美咲。将来結婚する気があるも、なかなか煮え切れない畔木なんですね。

一人ひとりの過去や現在の境遇が書かれていきます。坂城部長も、畔木も悲しすぎる過去を背負っています。
しかし、美咲の過去がイマイチよくわからんなー。どうやら施設を抜け出して、畔木君のところに行き倒れたようなんですが…。
良く考えてみると、この作品に出てくる人はみんないい人なんですね。

それが作品自体に安心感を与えることにもなっているし、悪く言えば、意外性がなかったようにも思えます。
ラストは、やはり、こうきたかという感じで、まずは大団円ですが。やはり、意外性が欲しかったな〜。

COW HOUSEというネーミングもおかしいんですね。これは敢えてふれませんが、これほど題名と中身が違っている作品も珍しいかもです。

こんな家に住みたいし、こんな人たちに出会いたいとも思えます。が、結局、現実感がなくて、夢物語としか言いようがありませんね
こう書くと、悪いところばかりと感じられては困りますので、書きますが、内容は面白いですので、念のため。

ただ内容の割に、胸に響かないライトな作品だったというのが、一番の感想でしょうか。
あっ、そうそう、おじいさんと畔木の会話が絶妙でした

まじめさゆえに窮地に陥ってしまう愛すべき隣人たち。
どこかで身に覚えのある危うい心、共感せずにはいられないミステリー集。
家庭がありながら運命的な出逢いをしてしまった2人、人の世話ばかり焼いてしまう癖を恋人に咎められる青年、息子が事故に遭遇しても足がすくんで助けられない夢にうなされる母親、隣室の女性がストーカーに殺されたのに何もしなかったと非難される男。誠実な人々の窮地を描いて共感を呼ぶミステリー集。【講談社HPより】


 面白かったなー。どの作品の主人公たちも、少し変わったところもあるが、多くはいたって真面目で平凡な人たち。ただ自分たちのルールを守りたいだけ。そんな主人公たちが、事件に巻き込まれてゆくんです。

「バクのみた夢」の主人公は、不倫カップル。お互いの家庭を持ちながら、出会った瞬間、惹かれあってゆくのですが、真面目(?)だから、お互いがお互いの家庭を思いやり、どちらかが死ねば解決しようと思い立つ。そして、選んだ方法とは。不倫に真面目も何もないか。不倫をジメジメとしないで、さっぱりとしたミステリーと仕上げているところがいいですね。

「カンガルーの袋」の主人公は、二卵生双生児の兄妹。相手のことを気遣いすぎる兄と、わがままな妹。そんな妹が兄の彼女に挑戦を突きつけたこととは。

「駅で待つ人」…駅で待っている人を見るのが趣味の主人公。誰を待っているのか分からない彼女が、気になる。そして、現れたのは…。

「とっさの場合」…主人公は強迫観念症の主婦。息子が目の前で死んでしまうという、悪夢にさいなまれている。そんな彼女が、夫の前でとっさにした行動とは。

「マリッジブルー、マリンブルー」…婚約相手の実家に立ち寄る手前に海岸を訪れた男。しかし、この海岸のは見覚えがある。かって、男には事故にあい、二日間の記憶がなくなっていた。その二日間に何があったのか。

「無言電話の向こう側」…仕事を通じて仲良くなった友達。しかし、その友達は、隣人の女性が殺され、何もできなくて、批難をうけていた。そんな友達が、3時8分になると、無言電話がかかることに悩まされていた。その真相は。

この六話なんですが、わたしが好きなのは「バクのみた夢」「とっさの場合」「無言電話の向こう側」かな。特に「無言電話…」の樽見君は本当にいいやつだ。相手をき傷つけないように、納得させるなんて、少し勉強になりました。いいやつだけに事件を引きずっているんですね。

この作品は、普通で平凡な人たちが、事件に巻き込まれるお話ですが、これはすなわちわたしたちの身近なお話と捉えた方がいいのかもしれません。わたしたちも、いつこの人たちのように、巻き込まれるかわかりませんねー。
「マリッジブルー…」の主人公の記憶をなくした怖さ。これも気をつけよう。経験のある身としては。と、自分を戒めてみる。

最後の一行までじっくりと読んでください。あっと言わせてくれます。やはりこれは、ミステリなんですね。面白かった作品です。

<速くなる。もっと、速くなる>

神谷新二と一之瀬連は、親友同士。揃って、春野台高校に入学する。そこで見た連の走りを追って、陸上部に入部する。4継(400mリレー)の虜となる。天才ランナー連に憧れ、ひたむきに走ることを追い求める新二。やがて、4継という競技にとりつかていく。

なんて、面白いんでしょうか。「バッテリー」「DIVE!!」はいずれもスポーツ小説の名作だと思っていますが、これまた、佐藤さんのこの作品が仲間入りしたといっても、いいでしょう。
サッカーというスポーツでは肝心なところで、ミスをしてしまう、新二を陸上にひき込むのは、一之瀬連。中学時代、陸上関係者にその名を認められたにもかかわらず、決して自分を出さず、マイペース、決して、交わろうとしない連。その走りを見て、陸上部に入ることを決意した新二。その最初のシーンもすごくいいです。

そして、陸上ではたいして、有名ではない高校を、徐々に引き上げていく、連と新二。そして、最強鷲谷高校の仙波と高梨。この関係は何となく「バッテリー」に似ている気もするが、そんなことは言っておられないほど、面白いんですね。

それぞれの家族と生活や、陸上を通じてできてくる友情や、先生の思いやり。
わたしはみっちゃんこと三輪先生が好きだなー。守屋先輩も実に優しく、風水好きの浦木などそれぞれのキャラが立っています。

連と新二の友情も泣かせます。強圧的な合宿から、脱走する連を探す新二たち。見つけて空を見上げると、無数の星たち。そして、新二は言うんです。
「逃げるな。一番みっともねえ」
こてこてのスポーツと友情小説にもかかわらず、なぜかこんなシーンに魅かれていくんです。佐藤さんは、実に上手いです。

そして、連のように走ることを追い求めることが、いつしか、連より速く走りたいと思うようになるんですよね。親友であり、ライバルの連。この二人の関係がまたいいんですね。どんどん、陸上の世界にのめりこむ新二。読むわたしたちも引き込まれていきます。

春野台高校陸上部の4継走者たちの今後はどうなるのでしょうか。そして、ライバル達との関係や恋や友情、家族。いいなー、本当に次が早く読みたくなる、一部から読者をのめり込ませる傑作スポーツ小説であることは、間違いありません。

<一箪の食、一瓢の飲、陋巷に在り>

孔子の一番の弟子でありながら、出世の野心なく、貧しい人々の住む陋巷に住み続けた顔回。師に迫る危機に持って生まれた能力を使い、敢然と立ち向かう。

いやー、ぶっ飛んだ作品でした。孔子は儒経を発展させた言わずと知れた大家。その弟子達は、孔子を守るための兵士達だったというのが、酒見さんの発想なんです。いやはや、すごい。

孔子の描写もすごい。2mを超える大男でありながら、なんと武術にも長けている。敵を一刀両断にしてしまうんですね。
そして、その弟子たちが、顔回を始めとしてすごい。弁舌に優れている子路、鳥の言葉が使え間諜の役目を果たした公冶長など。

一方、敵もすごい。敵は大国、斉の宰相、晏嬰。晏嬰とは偉大なる父、晏弱の死後、三年間喪に服し、儒の教えを全うしたとされる、名相。詳しくは、宮城谷昌光さんの「晏子」にも書かれていますので、そちらを。その晏嬰がなぜ、孔子を狙うのか。

諸国を流浪し、魯という小国の中で、取り上げられ、魯を支配している三桓の中で宰相として名を上げている、孔子に立ちはだかる政敵陽虎。
儒は呪術だったという発想もすごい。その呪術同士のサバイバル。

果たして、顔回は孔子を守れるのでしょうか。すごい敵が続々登場してきます。随所に書物に出ている孔子のエピソードや弟子たちの話が盛り込まれ、また春秋戦国時代の名相や、儒という思想に触れられています。

これは、歴史小説と伝奇小説の名作かもしれない。一巻を読み終えた感想です。
今、映画「墨攻」が公開されています。孔子と墨子は同じ時代背景で全く相反した思想であったということも初めて知りました。

日本にも影響している儒教も教えてくれます。
様々な知識も満載で面白い。そして、奇想天外。
いやー。こんなに面白い作品を読み逃していたなんて、後悔しきりの一冊です。

オンライン書店ビーケーワン:制服捜査

<犯罪が起きない町に潜む闇>

北海道警の不祥事の煽りで、同じところに長く勤務させないという方針の下、札幌から着任した川久保巡査。小さな町を守る、たった一人の駐在警官。私服から制服に変えて、「何も起きない町」の事件の捜査にあたる。

新しい警察小説という触れ込みは、はずれていないです。従来の警察小説は警察機構の中で、はみ出したり、組織の中で苦しむ主人公が主でした。しかし、この小説ではたった一人の警官。それも事件が起きないのが当たり前のところという、全く違う設定になっています。そんな田舎の町で起きる、事件を前刑事という肩書きがある彼は解いていきます。

管轄する署の刑事たちは、
「制服は捜査するのを邪魔するな」と考えていますが、川久保は
「捜査ではなく、町民の情報を集めるのがわたしの仕事」と言います。捜査もままならない中、事件をどう解決していくんでしょうか。

この小説のベースは、北海道警で起きた裏金事件。この不祥事を巧みに背景に取り入れ、主人公を造形しています。これはネット仲間からの情報ですが、冒頭の「捏造」の事件は、実際の事件がベースのようです。現在も公判中だとのこと。
北海道出身の作家、佐々木さんならではでしょうね。

単独捜査を余儀なくされる主人公を、いつしか励ましています。しかし、各話の解決がどうも、すっきりしないのです。これも最終話「仮装祭」があってこその持っていき方なのでしょうけど、もう少しすっきりと…はわたしの欲なんでしょう。「仮装祭」が良すぎるんですね。「犯罪者を出さない町」に気付くんですね。

しかしながら、この主人公を作った佐々木さんはすごい。作家の逢坂さんも書評で書いていたのですがこれは西部劇なんですね。新任保安官が名もない町に辿りつき、一人で奮闘する。そういう西部劇の世界が、この作品をはじめ、他の作品にも色濃く反映されています。

北海道という地を背景に、紡ぎだす和製西部劇の世界。次はどんな作品を作ってくれるのでしょうか。何とも幅広い作家さんですねー。
見事な復活です。
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